発達障害の子どもの感情を理解するためのコミュニケーション術
2025.08.08

東京都板橋区にある小児専門デイケア施設ハートライン清水町です。今回は、「発達障害の子どもの感情を理解するためのコミュニケーション術」についてお話をしていきます。
目次
- 感情の伝え方がちがう──だからこそ見落としやすい
- 「困らせる」のではなく「困っている」
- 言葉の奥にある“感覚”を読み取るには
- 声かけよりも「観察」から始める
- 親子関係の中でできること
- 最後に
.
感情の伝え方がちがう──だからこそ見落としやすい
発達障害のあるお子さんは、自分の感情をそのまま言葉にすることが難しい場合があります。たとえば、悲しい・つらい・不安といった感情を、「おなかが痛い」や「もう帰る」といった行動や言葉で表現することがよくあります。周囲の大人からすると「どうして今そんなことを言うの?」と戸惑うかもしれませんが、それは本人なりのSOSのサインであることが少なくありません。感情と言葉のズレは、周囲にとって誤解のもとになりやすく、結果的に子どもが否定されたり怒られたりしてしまう原因にもつながります。まず大切なのは、「この子は感情を違う形で表現しているかもしれない」という視点を持つことです。それだけで、子どもの本当の思いに少し近づくことができます。
.
「困らせる」のではなく「困っている」
発達障害の子どもが見せる行動の中には、つい大人が「困ったな」と感じてしまうようなものが含まれることがあります。たとえば、急に怒り出す、泣き止まない、同じ言葉を繰り返すといった行動です。けれど、その多くは「困らせようとしている」のではなく、「自分が困っている」ことの現れです。不快な感覚や不安な気持ちがうまく処理できず、行動として外に出てきているだけなのです。この視点を持てるかどうかで、コミュニケーションの質は大きく変わります。頭ごなしに「やめなさい」と言うのではなく、「何がいやだった?」「どこかつらい?」と気持ちに寄り添った言葉をかけることで、子どもは少しずつ自分の感情を認識し、伝えようとする力を身につけていくようになります。
.
言葉の奥にある“感覚”を読み取るには
発達障害のある子どもが感情を伝えるとき、使われる言葉の背景には、強い感覚的な体験が影響していることがあります。たとえば、「こわい」「イヤだ」と言ったときに、その言葉通りの意味以上に、光がまぶしすぎる、音がつらい、肌ざわりが気持ち悪いなど、五感を通じたストレスが関係していることがあります。本人もそれをうまく説明できないため、「意味がわからない」「わがままを言っている」と誤解されがちです。だからこそ、言葉だけをそのまま受け取るのではなく、「もしかして、あの音が苦手だったのかな?」「人が多くて落ち着かなかったのかも」と、言葉の背景にある感覚を丁寧に読み取ることが大切です。それに気づくことができれば、子どもの感情もより理解しやすくなりますし、同じ場面でのサポートもしやすくなります。
.
声かけよりも「観察」から始める
つい「どうしたの?」「何がイヤなの?」と声をかけたくなることは多いと思います。しかし、発達障害の子どもにとって、問いかけは時にプレッシャーになることもあります。大人の期待に応えようとがんばってしまったり、焦ってうまく答えられなくなったりすることがあるのです。そんなときは、あえて声をかけすぎずに、まず「観察する」ことを意識してみてください。どの場面で表情がこわばったか、どんなタイミングで声のトーンが上がったか、体の動きはどう変化したか。そうした小さなサインから、感情の揺れを読み取るヒントがたくさん見つかります。子どもの側に静かに寄り添いながら、気持ちが落ち着くのを待ってあげること。それ自体が、大切なコミュニケーションになり得ます。
.
親子関係の中でできること
子どもとのやり取りの中で、感情を理解しあえる関係をつくるには、特別な技術よりも“毎日の積み重ね”が何よりも大切です。たとえば、うれしい気持ちや楽しかったことを言葉にする場面を意識的に増やしてみるのも良い方法です。「今日、楽しかったことあった?」と聞くよりも、「あのとき、笑ってたね。うれしかった?」と具体的な出来事に結びつけて言葉にすることで、子どもは感情と出来事を結びつけて学んでいけるようになります。また、子どもが感情を出せたときには、「気持ちを伝えてくれてありがとう」と伝えてあげてください。伝えることは「良いことなんだ」と思える経験の積み重ねが、子どもの安心感と信頼につながっていきます。親も子も、完璧でなくて大丈夫です。「伝え合おう」という気持ちが通いあうことが、何より大事なのです。
.
最後に
発達障害のある子どもの感情は、見えづらく、時に大人の常識では理解しにくい形で現れることがあります。しかし、それを「わかりにくい」と片づけてしまうのではなく、「どうすれば伝わるだろう?」「この子は何を感じているのだろう?」と、思いを向けることが、子どもの心をひらく第一歩になります。コミュニケーションとは、言葉のキャッチボールだけではありません。声をかけること、黙って寄り添うこと、気づくこと、どれもが立派なやりとりです。私たちハートライン清水町は、日々お子さんと向き合いながら、感情の言葉にならないサインを丁寧に受けとめることの大切さを感じています。ご家庭でできることに迷ったときには、どうか一人で抱え込まず、私たちに気軽にご相談ください。小さな気づきが、大きな変化のきっかけになるかもしれません。
.
以上、東京都板橋区にある小児専門デイケア施設ハートライン清水町でした。
何かあれば気軽にご相談くださいね。
.
無料相談問い合わせ
https://heartline-shimizucho.com/contact/
.